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005:釣りをする人




親父が亡くなってもう1年になる

今はもう悲しみが退いたけども、でも未だに親父が仕事からひょっこりと帰ってきそうなしてならない

おふくろもきっとそんな感じを抱いているだろう

俺は最近仕事を休み、ふらふらと親父との思い出の場所を訪ね回っている

もしかしたらあそこに親父がいるんじゃないか?そんな気持ちを抱きながら…



「よぉ!今日も散歩かい?」
「あぁ…」
商店街を歩いていると八百屋のおっちゃんが声をかけてきた
「ならあっちの山へ行ってみるといい。気持ちいいぞ」
「ありがとう。行ってみるよ。」

山かぁ…まぁたまにはいいか  そう思い、山へと歩き出した
そうして、かれこれ10分位、意外に近いんだよね
この山にもよく遊びに来たよなぁ

しみじみと思っていると 瞬間 空間が歪んだような気がした

「なんだ?熱のせいか??」

ん〜風邪か?だとしたらやばいなぁ…散歩どころではないなぁ…
とりあえず帰るか 焦る必要性もないし

そう考え、今来た道を引き返す

いつもの商店街を抜けて…?

ちょっとまて  ここいつもの商店街じゃないぞ!?

おいおい、幻覚かよ??
しかもここ10年前の商店街じゃねぇかよ
ありえない…

あっけにとられてると急に子どもがぶつかってきた

「おぢちゃんごめん!!」

その子どもは急いでいるようでこっちを振り向きもせず走り去ってしまった

なんだぁ??

「悪いな。あいついつも親父さんの後をおっかけてるのに必死なんだよ」

ふぅ〜んそうかぁってこの人八百屋のおっさんじゃん…
ということは…あれは俺か!?
急いで追いかければ親父に会える!?

「おっさん!あの子ども何処へ向かった!?」
「あぁ?川辺の方じゃないかなぁ?今日は釣りをするって言ってたから…」
「ありがとう!」

俺は必死に走った
もしかしたら親父に会えるかもしれない 幻覚だろうが無かろうが関係ない 親父に会える…!

その頃、八百屋の親父は不思議そうに山手を見ていた
「なんじゃあら…」



必死に走ること10分位、山を入るとすぐに川辺が見える
辺りを見回して親父を捜す
よく見ると…木々の隙間から釣りをする人が見える


こっちからではよく見えないが…あれは 親父だ!!


「親父!!」

そう声をあげるとその影はのっそりと立ち上がった

「おぉ…遅かったな。待ってたぞ」

彼はこっちを振り向いた

間違いない 親父だ
俺が探していた親父だ

「元気か?」
「あぁ…親父は?」
「あぁ。上で仲良くやってるよ。でもなお前が心配でたまらんから神さんにお願いして降りてきちまったよ」

親父だ…
涙が頬を伝っていた あれだけ探した親父がいる
それだけで俺は十分だった

「いつまでも落ち込んでるんじゃねぇぞ。俺はもういかなきゃいけねぇからな」
「親父!!」
「なんだ?」
「ありがとう…」
「ん…じゃもう行くわ。元気でな」

親父が最後の言葉を言った瞬間
風が親父を包み、木の葉が舞い上がり 親父は光の中へと消えて行った

親父…

ありがとう 親父 俺のために


俺は立ち直れそうな気がするよ 親父に会えてよかった

神様 ありがとう






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